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「認知症患者の介護者と法定監督義務者」

(1)問題提起

精神上の障害により自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態にある者(責任無能力者といいます。)が、他人に損害を加えても、その賠償の責任を負いません(民法713条)。これは、責任主義という民法の大原則によるものです。しかし、それでは損害を加えられた者の保護に欠けるので、責任無能力者を監督する法定の義務を負う者が代わりに損害を賠償する責任を負います(民法714条1項)。

 

重度の認知症が進行した人は、自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態にあるといえます。そこで、そのような認知症患者を介護している配偶者は、上記の「責任無能力者を監督する法定の義務を負う者」に該当するのでしょうか。

 

(2)事案の概要

重度の認知症患者であるAが、電車の線路内に立ち入り、列車に衝突して死亡しました。この事故により、列車の遅延等が生じ損害を被ったとする旅客鉄道事業を営む会社が、事故前までAを介護していたAの妻と子供が、責任無能力者を監督する法定の義務を負う者に当たるとして、同人らに損害賠償請求をした事案です。

 

(3)本判決

「精神障害者と同居する配偶者であるからといって、その者が民法714条1項にいう「責任無能力者を監督する法定の義務を負う者」に当たるとすることはできない。…もっとも、法定の監督義務者に該当しない者であっても、責任無能力者との身分関係や日常生活における接触状況に照らし、第三者に対する加害行為の防止に向けてその者が当該責任無能力者の監督を現に行いその態様が単なる事実上の監督を超えているなどその監督義務を引き受けたとみるべき特段の事情が認められる場合には、衡平の見地から法定の監督義務を負う者と同視してその者に対し民法714条に基づく損害賠償責任を問うことができるとするのが相当」であるとしました。しかし、自身も左右下肢に麻痺拘縮があり、介護を子供の嫁に手伝ってもらっていたAの妻、自身はAと同居していなかったAの子供のどちらも上記「監督義務を引き受けたとみるべき特段の事情」はないとして、鉄道会社による損害賠償請求を認めませんでした。

 

(4)この判決のポイント

重度の認知症患者の同居している配偶者であれば、無条件に監督義務が認められるわけではないものの、長年同居して介護も一手に引き受けていたといった事情があれば、損害賠償責任を負う可能性が十分に考えられることがポイントです。

核家族化が進み、配偶者の介護を一人で行っている方が増えてきているので、非常に重要な判例といえます。

 

(~最高裁平成28年3月1日判決~)


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