自賠責保険は、交通事故による被害者を救済するため、「自動車損害賠償保障法」という法律に基づき、すべての自動車に加入することが義務付けられている強制保険です。
強制保険には、自動車損害賠償責任保険のほかに農協、全労災が扱っている自動車損害賠償共済保険があります。
これらの保険の加入率は本来100%でなければいけないはずなのですが、実際には90%以上にとどまるようです。これらの強制保険に加入していない場合、刑事罰としては1年以下の懲役又は50万円以下の罰金が、行政処分としては6点がそれぞれ課せられるおそれがあります。
自賠責保険金が支払われる要件として、①賠償責任が生じたことによる保有者・加害者の損害を填補すること、②保有者が賠償責任を負うこと、③自動車(二輪・原付を含む)による交通事故であること、④被害者が「他人」であること、⑤人身損害であること(物損は含まない)が必要となります。
①「賠償責任が生じたことによる保有者・加害者の損害を填補すること」
自賠責保険は、一定の者が他人に対して賠償責任を負う場合に、その者が他人に対して賠償したことによる損害を填補する「賠償責任保険」ですので、①の要件が必要となります。
②「保有者が賠償責任を負うこと」
自賠責保険では、保有者が賠償責任を負わない場合(たとえば盗まれた自動車が事故を起こした場合など)、保険金は支払われません。但し、被害者救済のため、政府保障事業があります。
③「自動車(二輪・原付を含む)による交通事故であること」
自賠責保険を締結できるのは自動車だけですので、この要件が要求されます。なお、ここでいう自動車とは、通常の四輪自動車、二輪車、原動機付自転車などのことで、足踏式自転車などは自動車に含まれません。
④「被害者が『他人』であること」
他人の損害についての賠償責任保険ですので、保有者や運転者など、当該自動車の運行関与者について発生した損害について、保険金は支払われません。
ここでいう「他人」とは、「自己のために自動車を運行の用に供する者および当該自動車の運転者を除くそれ以外の者」(運行供用者でも運転者でもない者)とされ(最判昭和42年9月29日)、「運転者」には運転補助者も含まれます。
また、「他人」であるかどうかは、当該自動車の使用状況、所有名義、経費負担、誰が使用しているか、被害者の運転免許の有無などの具体的な状況をもとに判断されます(最判昭和47年5月30日)。なお、単に親族であるからといって「他人」に当たらないとされることはありません。
⑤「人身損害であること(物損は含まない)」
自賠責保険は人身損害に関する賠償責任保険ですので、この要件が要求されます。人身損害の具体的な内容としては、被害者の治療費、休業損害、逸失利益、慰謝料、葬儀費などがあります。
自賠責保険金の支払についてお困りの方は、ぜひ一度弁護士にご相談ください。
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