「慰謝料」とは,精神的苦痛に対する損害賠償のことをいいます。後遺障害慰謝料は,後遺症が残存したことにより被害者が受ける精神的苦痛に対する損害賠償です。
後遺障害慰謝料には,自賠責保険基準・任意保険基準・裁判所基準の3つの基準があります。それぞれ後遺障害等級に応じて基準額が定められています。
このうち,任意保険基準とは,各保険会社が任意に設定した基準で,大抵の場合は自賠責基準と同じか,多少上乗せした程度にとどまり,裁判所基準より大幅に低額になっています。
後遺障害慰謝料の自賠責基準・裁判所基準は以下のとおりです。
重度後遺障害の場合(特に第1級,第2級に該当する場合)には,被害者本人だけでなく,
近親者(事案によりますが,通常では配偶者・子・両親の範囲を指します)にも別途慰謝料請求権が
認められる場合があります。
認められるべきだという考えによります。これは,被害者が死亡こそしなかったものの,重大な後遺障害が残存したことにより,近親者として,被害者が死亡した場合に比肩するような精神的苦痛を受けた場合には,近親者の慰謝料請求権も
近親者固有の慰謝料には,後遺障害等級別の基準が存在しません。被害者本人の慰謝料額と比べて,どの程度の金額が近親者固有の慰謝料として認められるかは事案によりますが,平成21年以降の裁判例では,被害者本人の慰謝料額の5%から20%程度にとどまるものが多いようです。
例1)金沢地方裁判所平成18年10月11日判決
中学生の被害者が事故により頭部外傷(びまん性軸索損傷)の傷害を負い,後遺障害等級第1級1号が認められた事案。本人分の後遺障害慰謝料は2800万円が認められ,子の将来の成長への楽しみを
奪われ,将来に不安を抱きながら介護する生活を余儀なくされた両親にも各500万円の慰謝料請求権が認められた。
例2)長野地方裁判所平成18年11月15日判決
脳挫傷後,寝たきり状態となった被害者の主婦(当時60歳)に後遺障害等級第1級1号が
認められた事案。
本人分の後遺障害慰謝料2800万円のほか,夫に300万円,子2名(養子を含む)に
各200万円の慰謝料請求権が認められた。
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