自賠責保険は、賠償責任保険であり、賠償責任を負って被害者側に賠償金を支
払った加害者側が、本来自賠責保険金を請求できる立場にあります(これを「加
害者請求」といいます。自賠責法15条)。
ただし、加害者が被害者に賠償を行わない場合、被害者救済の観点から、被害
者が自賠責保険会社に対して直接、賠償金の支払を請求できるようになっていま
す(これを「被害者請求」といいます。自賠責法16条)。
このように、本来加害者請求が原則ですので、被害者が加害者から賠償金を一
部受け取っているなど加害者請求と被害者請求が競合した場合、加害者請求が優
先します。また、加害者請求によって自賠責保険の保険金枠全額(たとえば後遺
症のない傷害部分については120万円)の支払いがなされた場合、それ以上の被
害者請求は認められません。
被害者請求の態様には、①仮渡金請求、②内払金請求、③本請求があります。
①仮渡金請求は、被害者が当面の生活費や治療費に困るときに、損害を立証す
る書類がなくても診断書等を提出することによって、一時金の支払を受けるもの
です。
②内払金請求は、治療が長引く場合に治療期間中の治療費、休業損害をその都
度請求するものです。ただし、損害を立証する書類を提出する必要があります。
③本請求は、治療が完了し全損害が確定した段階で請求するものです。ただし、
保険金・損害賠償額支払請求書、交通事故証明書、事故発生状況報告書、休業損
害証明書など、決められた資料の提出が必要となります。
また、加害者が任意保険に加入していない場合などに、医療機関が被害者の代
理人として治療費を直接自賠責保険に請求することも可能です(これを「医療機
関による代理請求」といいます)。
被害者請求権は、事故発生後3年間で時効になります(平成22年3月31日
以前に発生した事故の場合は2年間)。また、後遺症については、後遺症の残存
が確定してから3年間で時効になります(平成22年3月31日以前に発生した
事故の場合は2年間)。通常、後遺症の残存確定日としては、後遺障害診断書に
記載された症状固定日がそれにあたります。
時効期間にはくれぐれも注意していただき、時効期間が近づいた場合、念のた
め時効中断の手続をとっておくようにしてください。
その他、自賠責保険金の支払についてお困りの方は、ぜひ一度弁護士にご相談
ください。
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